自転車で移動するのは便利だが、雨の日は大変だ。レインコートを着て自転車を運転するか、雨の日は自転車に乗らないかどちらか一方を選択するしかない。ただし、「サスベエ」に代表される自転車用傘スタンドを利用している人も多いようだ。
「さすべえ」は商標登録されている。
登録日は昭和57年(1982)4月30日となっており、権利者はアラカワ工業株式会社である。「サスベエ」の開発、製造もとのウェブサイトの会社概要欄には、
称号 : 株式会社 ユナイト
設立 :1983年7月
代表取締役 : 荒川和善
とある。
「サスベエ」の誕生以降にアラカワ工業株式会社は、株式会社 ユナイトに社名変更したのだろう。特許情報プラットフォームでキーワードを「株式会社 ユナイト 傘」と入れて検索すると7件もヒットする。その中で、発明の名称「自転車用傘支持具」とあるが、これが「サスベエ」だ。
特許を取得している素晴らしい発明だと思う。
海外ではどうだろうか?
海外の傘というと真っ先に思い浮かぶのが「Senz umbrella 」だ。
風速100km/hの風にも耐えられるという強度と、Aerodynamic shape(空気力学に基づき、空気抵抗を極力受けないように設計された形)と呼ばれる自転車用のヘルメットのような独特の形状で知られる、オランダの傘だ。
自転車用傘スタンドは便利に見えるが、走行中に傘が受ける風圧の心配があった。傘が裏返ってしまってはどうしようもない。
しかし、傘スタンドとSenz Umbrellaを組み合わせれば最強かと思った。
またSenz Umbrellaでは自転車用傘スタンドを、Umbrella holderとして販売していたが、現在は販売していないようだ。
https://www.senz.com/en/accessories/senz-umbrella-holder/ (リンク切れ)
オランダの道路交通法がどうなのかは知らないが、世界的な傘メーカーも自転車用傘スタンドを発売しているのだ。
もくじ
問題は自転車に取付ける傘のサイズなのか?
傘をさしながら自転車を運転すると片手運転になる。
だがハンドルに傘を固定すれば片手運転にはならない。
積載物のサイズ、つまり傘のサイズが問題で法律に引っかかるのだろうか?
東京都道路交通規則を読んでみる。
東京都道路交通法規則第10条の(3)に以下の記述がある。
(3) 積載物の長さ、幅又は高さは、それぞれ次の長さ、幅又は高さをこえないこととする。
ア 長さ 自転車にあつてはその積載装置の長さに0.3メートルを、牛馬車及び大車にあつてはその乗車装置又は積載装置の長さに0.6メートルを、それぞれ加えたもの
イ 幅 積載装置又は乗車装置の幅に0.3メートルを加えたもの
ウ 高さ 牛馬車にあつては3メートルから、牛馬車以外の軽車両にあつては2メートルから、それぞれの積載をする場所の高さを減じたもの
条文における積載装置、乗車装置の幅とは、ハンドルの幅になる。こちらは、道路交通法第9条の2により以下の規定がある。
第九条の二 法第六十三条の三の内閣府令で定める基準は、次の各号に掲げるとおりとする。
一 車体の大きさは、次に掲げる長さ及び幅を超えないこと。
イ 長さ 百九十センチメートル
ロ 幅 六十センチメートル
自転車の幅は最大で60センチだ。だからこれに積載物の最大幅をプラスすると90センチとなる。
開いた時の傘の直径とはどのくらいのサイズなのか?
英国王室御用達の傘ブランドFulton umbrellasのサイトによると、
レディース用で80センチから110センチ、メンズは90センチから130センチである。キッズ用だとそれ以下の直径65センチもある。
折りたたみ傘だとさらに小さく、開いた時の直径45センチから100センチまで揃っている。
Senz Umbrellaだと,
上記のサイトに記されているように、縦横共に、90センチ以下だ。90センチを超えるサイズもSenz Umbrellaにはあるが大半は90センチ以下だ。
Dimensionsの項にサイズが表示されているが、縦と横でサイズが異なるのがセンズアンブレラの特徴だ。
リンクに載せた傘は90cm×87cmだ。
このように、レディース用や、キッズ用以外でも使用時の直径90センチ以下の傘は販売されている。このサイズの傘を高さを2メートル以下に固定すれば自転車の傘スタンドにつけて良いのだろうか?
ハンドルに傘を固定すると、傘を差して自転車を運転するに該当する?
傘のサイズが幅90センチ以下なら、自転車に傘スタンドで固定して走行しても問題ないかというと、そうでもないようだ。東京都道路交通規則を再度読み直してみる。運転者の遵守事項として以下の記述があった。
(運転者の遵守事項)
第8条 法第71条第6号の規定により、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)の運転者が遵守しなければならない事項は、次に掲げるとおりとする。
(1) 前方にある車両が歩行者を横断させるため停止しているときは、その後方にある車両は、一時停止し、又は徐行して、その歩行者を安全に横断させること。
(2) 木製サンダル、げた等運転操作に支障を及ぼすおそれのあるはき物をはいて車両等(軽車両を除く。)を運転しないこと。
(3) 傘を差し、物を担ぎ、物を持つ等視野を妨げ、又は安定を失うおそれのある方法で、大型自動二輪車、普通自動二輪車、原動機付自転車又は自転車を運転しないこと。
問題は運転者の遵守事項第8条(3)の「傘を差し」の解釈だが、片手で傘を持っても、ハンドルに傘を固定しても、「傘を差す」に該当する。だから、傘スタンドを使ったとしても傘を差して自転車を運転しているとみなされる。
都道府県により異なるが、他府県の道路交通法を見るとやはり同じようなことが書かれている。
自転車用傘スタンドを有効活用しよう!
法規に照らし合わせて考えると、自転車のハンドル傘を固定して走行するのはダメだと考えられる。
しかし、自転車を押して歩く場合はどうだろう?
通勤で、駅まで自転車で行った。朝は晴れていたけど、帰宅時には雨。でも幸いカッパはないけど傘はある。
こんな時は傘を差して、歩きながら傘を差し自転車を押して帰ることになる。片手で傘を持ち、片手で自転車のハンドルを持って歩くのは危険だ。サスベエなどの傘スタンドがハンドルについていれば両手がふさがらない。両手がふさがった状態で歩くのは危ない。
転倒時に受け身がとれないからだ。
自転車に傘スタンドが装着されていれば傘をハンドルに固定して、片手でハンドルを持って自転車を押して歩くだけだ。左手で傘を、右手でハンドルを持って自転車を押して雨の中を歩くなんていうことにはならない。
自転車のカゴに荷物も入れられる。やはり、自転車用の傘スタンドはマストアイテムなのだ。
自転車用傘スタンド自体は違法ではない。有効活用したいものである。
サスベエはやはり便利なアイテムだ。
【追記】各種リンク切れ等を修正 2024年1月12日
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