もくじ
なぜ「セリアのジングル」は空耳になるのか?
セリア店内で流れるあの明るい英語のジングル、何と言っているのか気になった方も多いのではないだろうか?
実際には「Color your days, Color my days」と言っているはずですが、多くの人には「カラユデイズ」「セリヤ」「ユーカラマイデイズ」と聞こえてしまったり、たまにふらっと店に入ったらColor your day Color my dayに聞こえたりする。
空耳は本当にやっかいなものだ。気になり始めると頭から離れない。これは日常生活における集中力を乱す原因にもなる。空耳が起きないように改善できればもっと心地よく聴けるはず。まず原因を知ることが、空耳ソングを排除する第一歩である。
この“空耳”の原因は、単に発音が悪いからではなく、メロディ構成と英語のアクセントのズレにある。
空耳の正体:拍と音節がズレている
セリアのジングルの元の構成では、次のような拍のまたぎが起きている。
col(裏拍) → or(次小節の頭)
your days(続くが、弱拍で処理される)
つまり、「color」という1語が拍をまたぎ、音節のまとまりが崩れてしまうために、リズムと発音の両面から不明瞭になり、「カラユデイズ」と聞こえてしまう。
MUSESCORE3で譜面を作って、Sinsy(歌声合成システム)で歌わせてみた。Sinsyはmusicxmlファイルという音楽ファイルをアップロードするだけで、歌声を生成してくれるウェブアプリケーションである。musicxmlファイルは無料のMUSESCOREで作成可能。
音声ファイルを後でのせるが、譜面を見ながら聞いてみてほしい。拍をまたいだ構成により、「color」が「カラ」に聞こえる例、英語単語 “COLOR” とアクセントが逆転している。要するに日本語英語の部類に属する。英語としても、日本語としても何かおかしいので空耳を誘発する要因になっている。
英語としての意味も問題がある?
さらに、「Color your days」というフレーズは、文法的には命令文にあたる。
つまり、
Color your days.(あなたの毎日を彩れ)
Color my days.(私の毎日を彩れ)
という、やや強い響きの命令形に聞こえてしまう。
ただし、日本語の感覚からすればこれは「Enjoy your life」や「Live your dream」と同様に、スローガン的な日本語英語として自然に受け入れられる。広告コピーとして使われる命令形表現に近く、ブランド的には一貫性が感じられる。
そこで改善案:Let’s構文で自然なメロディに
英語らしい強弱アクセントと自然なリズムを両立するために、以下のように改善案を提案したい。
(Let’s ) color your days, (you)color my days
この構成では、「Let’s」が4拍目の裏に入り、「color」が次の小節の頭(強拍)に来ることで、単語としてのアクセントが正しく配置される。また「Let’s」によって命令形の印象も和らぎ、共感的・提案的な表現へと変わる。
Let’s や You といった基本的な英単語を加えるだけで、意味の印象は大きく変わる。
“Let’s color your days, you color my days” をあえて日本語に訳すとしたら、
直訳的な日本語では:
あなたの毎日を彩ろう、そしてあなたが私の毎日を彩ってくれる。
意訳(キャッチコピー的な調整を加えた訳):
一緒に日々を彩ろう。あなたが、私の毎日を輝かせてくれる。
さらにやさしく口語調に寄せた訳:
あなたと一緒に、毎日をもっとカラフルに。あなたがいるから、私の毎日も彩られる。
翻訳のポイント
“Let’s” は「一緒に〜しよう」という提案・共感的表現;「Let’s」は読者参加型の呼びかけであり、ブランドが“顧客とともに”というメッセージ性を強める効果もある。
“color your days” は「あなたの日々を彩る」
“you color my days” は「あなたが私の毎日を彩ってくれる」という詩的な表現
この構文は、一方向の命令ではなく、「あなたと私の関係性」を優しく描く表現になっており、
セリアのブランドイメージ(温かさ・共感・色彩・日常)とも非常にマッチさせるように配慮した。
音で聴いて比べてみよう
Sinsyで作成されたメロディは、実際に音声ファイルとしてダウンロードすることができる。以下にオリジナル版と改善版の両方をアップしてあるので、ぜひ譜面とあわせて聴き比べてみてほしい。
- オリジナルメロディ(空耳が発生する構成)
- 改善版メロディ(Let’s構文を導入)
いずれもメロディ自体はほぼ変わっていないのに、英語としての自然さが大きく異なることに気づくはず。ほんの一言加えるだけで、これだけ印象が変わるのだ。
本当に英語として認識されるのか、次のセクションで、Youtubeの文字起こし機能ではどうなのか?あるいは、音声認識精度の高いAIとして知られるNottaに聞かせてみた結果を述べてみる。
ただし、音声認識用に新たに生成した歌声は、Sinsyで作成したのではなく、SynthesizerV studio Pro2で作成している。歌声ライブラリーは英語パートはNatalie2を使い、日本語パートはMai2で作ってある。また字幕の自動生成機能は一つの言語として認識するようなので、あえて、「私を彩るセリア」という明らかに日本語の部分はYoutubeにアップロードした動画には含まれていない。
セリアのジングルの英語はYouTubeとNottaで正しく認識された
本当に英語として認識されるのか?YouTubeの自動字幕機能や、音声認識精度の高いAIツール「Notta」で検証してみた。
改善版の音声を使用したYouTube動画では、自動字幕機能が「Let’s color your days, you color my days」を完全に音声認識した。これは音声改善の効果を示す明確な証拠だ。
さらに、音声文字起こしアプリ「Notta」による解析でも、正確な文字認識結果が得られている。
Nottaに聞かせた音源は、英語と日本語がミックスされた完全バージョンです。こちらはTikTokにもアップロードされている。以下のURLで聞くことができる。伴奏もついている。
まとめ:セリアのジングルは変えなくても、より良く聴かせられる
- セリアのジングルは、文法的にもリズム的にも“ズレ”があった
- ただし、スローガン的な日本語英語としては成立している
- それでも、発音・アクセント・意味の明瞭さを重視すれば改善の余地がある
今回の検証では、音声・譜面・構造・字幕認識のすべての視点から、より伝わりやすいジングル表現に近づくことができた。
セリアのジングルの魅力を、より深く楽しむきっかけになればと思う。もしこの記事が役に立ったと感じたら、ぜひシェアやコメントもお待ちしています!
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