2025年4月19日、Yahoo!ニュースに一本の記事が掲載された。
タイトルは「『高級料理店で毎晩会食』『マッサージやメガネ代まで経費に』3年間で4000万円以上を私的に流用…『アントニオ猪木・最後の妻』の呆れた豪遊ぶり」。
読んでいくと、そこには驚くべき名前が登場する。
「赤坂さくま」——私が8年前、すでに閉店していたこの店の跡地を取材し、記録として残していた、あのすっぽん料理の老舗である。
もくじ
IGFの“接待店リスト”に「さくま」の名が
記事によれば、アントニオ猪木氏の元妻であり、格闘技団体IGFを事実上運営していた橋本田鶴子氏が、団体の経費を用いて高級店での会食やマッサージ、美容費、渡航費などを私的に利用していたという。
その中に登場する高級料理店の一つが、「赤坂さくま」だった。
豪遊の内訳としては、帝国ホテル「なか田」、六本木「あつし」、西麻布「しゃぶ玄」などと並んで、赤坂「さくま(すっぽん)」の名が明記されている。
3年間に及ぶ会食の総額は1500万円を超え、橋本氏は「兄貴(猪木)」との晩酌や会食の費用として、この店を何度も訪れていたようだ。
IGFとは何か
IGF(イノキ・ゲノム・フェデレーション)は、2007年にアントニオ猪木氏が創設したプロレス団体である。
「猪木イズム」を継承し、“闘魂”の精神をリング上に再現することを掲げた同団体は、プロレスと格闘技の中間を行くようなスタイルで知られた。
旗揚げ当初はメディアにも注目されたが、猪木氏の政界進出に伴い、経営実務は橋本田鶴子氏が担うようになっていた。
今回の報道では、その経費運用に不透明な点が多数発覚し、赤坂の老舗料亭がその舞台になっていたという事実が明らかにされたのである。
2017年、私はそこにいた
私が「赤坂さくま」の跡地を訪れたのは、2017年。
すでに営業を終え、静かに取り壊しが進んでいた建物の外観と、赤坂の裏通りに溶け込むような佇まいを記録に残したいと思った。
看板は外され、門だけが静かに残っていたあの風景は、誰にも知られずに消えていく都市の記憶そのものだった。
その記録は、以下の記事として2017年に公開している:
→ 赤坂すっぽんさくま閉店の謎 – 東京伝統料亭の歴史と再発見の旅(2017年)
「記録しておくこと」の意味
当時、私はただ「もったいないな」「なぜ誰も記録しないのだろう」という気持ちで現地に足を運んだ。
それがまさか、8年後に報道記事と結びつき、社会的なスキャンダルと重なるとは想像もしていなかった。
だが、こうした予期せぬ“重なり”こそが、記録の意味だとも言える。
風景は消える。だが、それを記録していた誰かがいれば、あとから意味を与えることができる。
おわりに
「赤坂さくま」は、いま存在しない。
だが、かつてこの街で何が起きていたのか、どんな風景があったのか、誰がその場所で何をしていたのか。
そうした記憶の断片は、記録する者がいたからこそ、後世に語り継がれる。
Yahoo!ニュースの記事はやがてネット上から消えるだろう。
だが私の記事は、2017年に記録したまま、今も変わらず公開されている。
関連リンク
参考記事:
『高級料理店で毎晩会食』『マッサージやメガネ代まで経費に』3年間で4000万円以上を私的に流用…「アントニオ猪木・最後の妻」の呆れた豪遊ぶり(Yahoo!ニュース/2025年4月19日配信)
※記事では、赤坂「さくま」を含む高級料理店での会食費が3年間で1500万円にのぼったとされ、当時のIGF経費の私的流用が報じられています。
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