結論から言うと、セリアの歌が聞き取れない最大の原因は、英語でも日本語でもない「日本語英語的な発音」にある。
セリアといえば、100円ショップとして代表的な存在だが、その店内で頻繁に流れてくる歌については、何と言っているのか聞き取れないという声がネット上で多数聞かれた。
私自身も、聞き取ろうとしたが、
・叶いワンデー
・ナイトアンドデイ(四拍目の裏のカの音を聞き逃すとこのように聞こえる)
・叶え合って
・カラマッテ
・叶うマイデイ などなど、人によって聞こえ方が違うため、セリアの歌の空耳は数えきれないほどあるので、ここには全部書かない。
私も聞くたびに違って聞こえてしまっていた。
もう一度、セリアの歌(店内オリジナル音源)を聞いてみよう。
楽譜はすべてアルファベットで歌詞を表記しているが、下の段の4小節目からは、私を彩るセリアと、日本語で歌われている。この部分の聞き取りに問題はないはず。
一番聞き取りづらいのが、二小節目である。colorの「lor」がどうしても聞き取れない。ラーではなく、ナーに聞こえる。「LOR(ラー)」ではなく「NAR(ナー)」である。
いろいろ検討した結果、この歌の発音は、英語でも日本語でもなく、日本語英語だということが空耳の原因だという結論に至っている。
もくじ
セリアの歌はなぜ聞き取れない?発音(日本語英語)を検証して補正してみた
この歌の出だしの二小節を英語として聞く限り「発音が良くない(甘い)」と判断してしまって良いと考えられる。
オリジナルの音源は「Color your」の「L(ル)」の音が不明瞭で、なぜか「N(ン・ナ)」に近い音に聞こえてしまい、「カナーイ」のように響いている。
これには、技術的・発音的な理由がいくつか考えられる。
1. 舌の動きが不正確(LとRとNの混同)
「Color」の「l」を発音する際、英語では舌先を上の歯茎に付けるが、この離し方が曖昧だったり、鼻にかかった声(鼻濁音気味)で歌ったりすると、日本語の「ナ行」に近く聞こえてしまう。 特に、可愛らしさを重視した歌い方(ウィスパーや甘い声)をする際、滑舌をあえて崩すことがあるが、それが裏目に出て「カナーイ」に聞こえている可能性が高い。
日本人が英語を発音しようとすると、「L」の発音に過剰に意識が働くため、舌の先を口の中の上側(上口蓋)の歯茎の裏辺りに強く付けすぎたり、長く付けすぎてしまうことが多い。舌の動かし方のタイミングと強さの両方が適切でないと正確にLを含む単語は発音するのが難しい。
舌の先を付けたままで、Lの次の「O」の発音に入ってしまうため、音が抜けきらず、鼻にかかった結果、ラーがナーに聞こえるように発音されてしまう。
2. 母音の連結(リエゾン)の処理不足
「Color」の語尾の「r」と、「your」の「y」が繋がる部分は、滑らかに移行する必要がある。 オリジナル版は、ここで変な母音(「イ」のような音)が間に挟まって混ざってしまっているため、「カラー・イ・ユア」→「カナーイユア」という謎のフレーズに聞こえてしまっている。
3. 補正した音源との対比
次に載せる私自身で作った音源では、意識的に、「L」の音をクリアに発音し、次の「your」へ繋げる処理をはっきりさせているため、歌詞がスッと入ってくるはず。 この比較からも、やはりオリジナル版は「雰囲気重視で、発音の正確さを犠牲にしている(あるいは単に歌手が英語の発音を苦手としている)」と言える。
「英語っぽく歌おうとして、逆に不自然な日本語英語になってしまった典型例」とも言える。お店で流れるたびに「カナーイ」が気になっていた理由が、発音補正バージョンですっきりしたのではないだろうか?
セリアの歌の発音は補正するのが正解なのか?
「発音の正確さ」と「ブランドイメージの伝達」は、必ずしもイコールではない。むしろ、あえて発音を日本語英語で崩すことで成功しているケースとも言える。
1. 用語について:日本語で「ジングル」は?
セリアのあの曲のような短いフレーズや楽曲は、日本語(業界用語)では主に以下のように呼ばれる。
- サウンドロゴ (Sound Logo): 「Color your days」という短いフレーズにメロディを乗せて、耳でブランドを記憶させる手法(例:インテルの「ピンポンパンポン」や、マクドナルドの「タラッタッタッター」など)。
- イメージソング / 店内ソング: 歌全体を指す場合。
- ショッパーズソング: スーパーや量販店で流れる独自の歌。
セリアの場合は、「ブランドスローガン(Color your days)をサウンドロゴ化したもの」と呼ぶのが最も正確だろう。
2. なぜ「日本語英語(あまい発音)」で正解なのか?
日本語英語が問題だという趣旨のことも書いたが、もしあそこでネイティブスピーカーが、完璧な発音で「Color!! Your!! Days!!」とキレッキレに歌っていたらどうなるだろうか?
ためしに、英語発音で歌ってみた音源ファイルも載せる。

ちなみにGoogle Chromeブラウザの字幕生成機能は私の環境では、セリアのオリジナル音源にはまったく反応しなかった。音楽以外の雑音の影響もあるのだろうが、やはり、発音に寄って、その言葉が英語なのか、日本語なのかAIが瞬時に判断できない音だからだろう。
- 緊張感が生まれる: 発音が良すぎると、どうしても「カッコいい」「スタイリッシュ」な方向へ寄ってしまい、100円ショップの「気軽さ」や「生活感」と合わないように感じる。
- セリアの世界観: セリアのコンセプトは「手作り感」「可愛らしさ」「日常の彩り」です。 先ほど分析した「舌を長く付けた、粘りのある発音(カナーイ)」が生む、少し鼻にかかった丸い音は、「ゆるさ」や「優しさ」を感じさせる。
3. 結論:BGMとしての機能美
技術的に見れば「舌の使い方のミス(LがNになっている)」とも言えるのだが、その結果生まれた音が、「買い物客を威圧せず、店内の空気を柔らかくする」という点において、制作意図通り(あるいはそれ以上)に機能していると言える。
- 私の作った音源: クリアで、メッセージ性が強く、楽曲として聴かせるクオリティ(音楽作品)。
- 店内のオリジナル: 発音は曖昧だが、空気のように溶け込み、セリアの「ゆるふわ」なブランド感を体現している(環境装置)。
「技術的な正解」と「演出的な正解」は違う、という非常に興味深い結論を導き出すことができた。これで、次にセリアに行ってあの曲(カナーイ)を聴いた時、今までとは全く違った、「許容」と「納得」の気持ちで聴くことができるだろう。
セリアの歌をアレンジや発音にこだわって作ってみるとどうなるか
セリアのブランドイメージソングとして、現在の店舗で流れているブランドロゴソング(ブランドスローガン)を、純粋に音楽として考えて作るとどうなるか?あくまで私が作ったものではあるが、載せておく。メロディラインにもアレンジを加えてあるが、果たして店内にこの歌が流れてきたらお客さんはどう反応するのだろうか?

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